答のない問い

TASを作っていると、しばしば難題にぶつかることがあります。雑に分けると次のどちらかです。

  • 最適解がわかっているが、それを実現するのが非常に困難
  • 最適解がそもそもわからないので、最適化のしようがない

これは個人的な主観になりますが、実は上の方がTAS制作者にとって数億倍苦痛です。答がわかっているのに解けない問題と格闘しているようなものですから。

さて、今日お話しするのは、2つ目のほうです。TASを作ったことない人や、そもそもTASのことをよく知らない人は、答のない問いに挑む方が苦痛だと考えるかもしれません。たしかに、答のない問いに挑むのは、それはそれで結構しんどいのですが、逆にあれこれ考えることができるためある意味楽しかったりもします。なにより、そのゲームについてさらに深く知ることのできる最高のチャンスでもあります。

TASerとしての成長は、この「答のない問い」なくしてはあり得ません。すでに確立されている最適解をただひたすら追うだけでは、表面的な技術しか身につかないからです。TASとして完成させる以上、「答のない問い」にもある一定の答えを出さなければなりませんが、それには柔軟な発想と、ゲームに対する深い理解が必要となります。そして、そうやってもがいた経験は、使い古されたものをただコピーするだけでは絶対に手に入れることができない最強の武器となるのです。

コミュニティが盛んなゲームのTASでは、しばしば革新的なルートが編み出されることがあります。傍から見れば突飛だったり、「何をどうすればそんなことを思いつくのだ」と言いたくなるようなものが多いと思います。しかしこのような斬新な発想の淵源は、答のない問いに答え続けることによって得られる、「智」にあるのです。