テンミリオンRTAをテンミリオン倍楽しむ記事

※この記事はテンミリオンをテンミリオン*1倍楽しむためのやたらマニアックな情報も含んでおり、とても長いです。皆さんのレベルに応じて適宜取捨選択しながら読んでください。なお、リメイク版「テンミリオンZERO」では一部の仕様がこの記事とは異なります。

 

はじめに

テンミリオン」は主に子供向けの良質な無料ゲームを多数公開されているシフトアップネットの1000万アクセス記念として制作され、2003年に公開されたシミュレーションRPGです。最近ではリメイク版の「テンミリオンZERO」も公開されており、こちらはiOSAndroidのアプリとしても配信され、人気を博しています。ゲーム自体はファイアーエムブレム*2*3のようなターン制のシミュレーションRPGとなります。

さて、一般的なRPGにはランダム要素(RTA界隈ではしばしば乱数*4と呼ばれます)がつきもので、運の良しあしで戦闘を有利に進められることもあれば、不利な戦いを強いられ、最悪負けてしまうこともよくあります。ところが、テンミリオンにはこうした運要素が一切なく、決まった行動をすれば必ず相手も決まった行動をしてくるという特性があります。このため、テンミリオンは、あらかじめ作っておいた戦闘手順を丸暗記し、その手順通りにキャラを操作すれば、誰でも簡単に誰でも同じように敵軍に打ち勝ってクリアすることができます。もうお分かりですね、テンミリオンRTAにおいては、操作の腕を磨くことはもちろん、いかに効率的な勝利手順を考案することができるかがタイムに直結します。事実、昨年9月時点では約22分半かかっていたAny%(最速クリア)は、執筆時点で4分16秒にまで短縮されています。

この記事では、テンミリオンRTAの主要種目の紹介から始め、テンミリオンRTAにおける手順構築の考え方や、操作面から見たテンミリオンRTAの難しさなどについて解説していきます。手順構築の考え方では、ゲームの仕様に関するマニアックな話も出てくるため、難しいと感じられた場合は適宜読み飛ばしてください。

 

テンミリオンRTAにおける主要種目紹介

RTA in Japan 2020で走られる「All Dungeons 5 Members」のほかにも多数の種目があります。それぞれの種目において、後で述べる手順構築の考え方も変わってくるので、比較してみてください。

  • Any%
    一番基本となる種目です。特に縛りは設けず、とにかく最速でゲームをクリアすることを目指します。

  • All Dungeons
    その名の通り、全コースをクリアするRTAです。テンミリオンには、クリア後追加ステージがいくつかあるため、それらも含め全クリするタイムを競います。

  • All Dungeons 5 Members
    全クリRTAであるAll Dungeonsに、「ゲーム開始時からいる5人のメンバーだけでクリアする」という条件を足した競技です。普通のAll Dungeons と比較して戦力層が薄くなり、仲間の援護に使える回復アイテムも実質的に1個しか使えないため、早解きが困難な種目です。

  • All Dungeons No Magic
    全クリRTAであるAll Dungeons に、「魔法攻撃を使用しない」という条件を足した競技です。後述しますが、このゲームでは魔法攻撃が非常に強力で、RTAでも普通にクリアする場合でも攻撃の主力を担うのは魔法攻撃です。これを封じることは非常に大きなハンデとなり、早解きが困難な種目です。

  • The Legend of Zelva
    「ジルバ以外は攻撃行動をできない」という条件の下で最速クリアを目指す種目です。なぜジルバが名指しされているのかは、実際にこのゲームをやってみると分かります。テンミリオンRTA最難種目であり、執筆時点で完走できたものは一人もいません*5

 

テンミリオンRTAにおける手順構築の考え方…の前に

本題に移る前に、このゲームの手順を考えるうえで不可欠な基本的知識を整理しておきます。

  • ステータス(能力値)
    個々のキャラには、そのレベルとキャラの種族に応じたステータスが設定されており、本来は自分と相手のステータスの特徴を考えて有利な攻撃を仕掛けるのがセオリーです。「本来は」という枕詞がついている理由は後回しにすることにして、簡単に見ていきましょう。
    • HP
      体力を表します。当然多ければ多いほどいいです。戦士系キャラなど、主に物理攻撃を担うキャラは高め、魔法攻撃や回復役キャラは低めです。

    • 攻撃力・魔攻
      文字通り攻撃の強さを表します。攻撃力は剣や弓などの武器による物理攻撃に対するパラメータ、魔攻は魔導書による魔法攻撃および回復の杖による回復量に対するパラメータです。当然のことながら戦士系キャラでは攻撃力が高め、魔法使い系キャラは魔攻が高めに設定されています。

    • 防御力・魔防
      文字通り打たれ強さを表します。防御力は物理攻撃に対する打たれ強さ、魔防は魔法攻撃に対する打たれ強さを決めます。戦士系キャラでは防御力が高め、魔法使い系キャラでは魔防が高めのことが多いですが、一部比較的魔防の高い戦士系キャラが存在します(ブルースなど)。クロウが属するパラディンは、魔力の高い騎士種族で、物理・魔法関係なく総合的に能力が優れています(ただし魔導書は扱えません)。なお、魔防は魔攻に比べて希少なステータスで、魔族系種族であっても魔防はたいして高くないことがほとんどです。

    • 速さ
      攻撃行動の素早さを決定するパラメータです。攻撃する際に相手の2倍以上あれば2回攻撃ができ、逆に相手の1/2未満であれば相手から2回反撃されることになります。このパラメータは職業間の格差が激しいパラメータで、極端に速く、成長もしやすいキャラがいる一方、極端に遅く、成長も鈍いキャラも存在します。

    • 移動力
      1ターンでそのキャラが移動できる距離を決定するパラメータです。マップ上には茂みやぬかるみなど、進みにくいマスも設定されており、そのような場所では1マス進むのに2を消費し、それ以外の場所では1消費します。移動力以外のパラメータはレベルアップによって増加していきますが、移動力のみレベルに関係なく初期ステータスのままです。移動力4が圧倒的多数ですが、ジルバやオーガーのような鈍重なキャラでは3、リンやガーゴイルのような移動に長けたキャラでは5に設定されています。

    • アイテム
      ステータスではありませんがついでなので書いておきます。そのキャラが装備している武器やアクセサリーです。1人あたり4個まで装備することができ、同じものを複数装備することも(無意味ですが)可能です。なお、アイテムストックはないので、誰も装備しないアイテムがあれば処分しなければなりません。当然処分すると再入手不可です。
      基本的に戦闘中は変更できませんが、特定の敵を倒してアイテムを入手した場合には、戦闘中であっても例外的に装備変更が可能です。

  • 攻撃の種類と職業の関係
    各キャラに装備することのできる武器には、その種類に応じた攻撃属性と、装備可能な職業(≒キャラ)が決められています。簡単に見ていきます。
    • 剣・斧
      物理攻撃に属するもっとも基本的な武器で、攻撃できる範囲は前後左右に1マスです(射程1~1)。剣はブルース・マゼンダ・ルファ・ティンク以外の味方メンバー全員が装備できます。斧はブロント・ジルバ・ミドリのみが装備できます。


    • 物理攻撃に属する武器で、射程1~1です。ただし、投槍と魔人の槍は自分から距離2まで*6の範囲を攻撃できます(射程1~2)。装備できるキャラはブロント・ジルバ・ミドリのみです。


    • 物理攻撃に属する武器で、射程2~2です。つまり、自分自身と隣り合う位置には攻撃できません。装備できるキャラはブルース・ルファ・ミドリのみですが、攻撃力の低いルファに持たせることはまずありません。

    • 素手・爪・牙
      物理攻撃に属する武器で、射程1~1です。装備できるキャラはリンのみで、リンが唯一装備可能な種類の武器です。なお、素手は外せません(逆に外せたら怖いですが、これによりリンのアイテム欄は実質的に3個になります)。

    • 魔導書
      魔法攻撃に属する武器で、炎の書・氷の書・雷の書・メテオの4つがあります。装備できるキャラはマゼンダ・ティンク・ルファのみです。
      射程は炎の書では1~2、氷の書では2~3、雷の書では4~4、メテオでは5~5です。このように射程が大きいアイテムがあることが特徴で、遠距離から先制攻撃を仕掛けたり、安全圏から一方的に攻撃できることから、攻撃の主力を担います。

    • 回復の杖
      魔法攻撃に属する武器(?)で、回復の杖・大回復の杖・遠回復の杖が存在します。射程は0~1ですが、遠回復の杖のみ2~4です(射程0とは自分自身のことです)。
      回復の杖は全員が装備可能ですが、大回復の杖と遠回復の杖はテミ・ティンク・ルファ・クロウのみが装備できます。

  • 行動範囲・攻撃範囲・索敵範囲・安全圏
    いずれも正式な用語ではありませんが、テンミリオンRTAにおいて重要な概念および用語です。例として、以下の図のような状態を想定してみます。なお、現在地は黄色丸印のマス、装備は炎の書(射程1~2)、メテオ(射程5~5)、回復の杖(射程0~1)で、移動力は4とします。濃い緑色のマス(△を付けたマス)は移動力を2消費し、灰色のマス(×を付けたマス)は通行不可のマスです。

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    • 行動範囲
      現在の位置から、そのキャラが持っている移動力で移動することができる範囲を表します。ゲーム中では、動かしたいキャラを1回クリックすると水色のマスで表示されます。この例では以下のようになります。

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    • 攻撃範囲
      現在の位置から、そのキャラが持っている武器によって攻撃が可能な範囲を表します。ゲーム中ではキャラの移動を確定した後に赤色(攻撃のみ)・青色(回復のみ)・紫色(攻撃回復両方)のマスで表示されます。この例では、例えば現在地における攻撃範囲は以下のようになります。

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    • 索敵範囲
      現在の位置から(必要であれば移動を行って)攻撃ができる範囲を表します。ゲーム内で一度に確認する方法はありません。この例では以下のようになります。行動範囲の各地点において攻撃範囲を計算し、足し合わせたものが索敵範囲です。行動範囲は水色の線で囲った内側です。

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    • 安全圏
      どの敵の索敵範囲にもなっていない場所です。特定の敵に対して安全圏を定義する場合もあり、その場合は対象となる敵の索敵範囲外の場所です。この例では、上の図で緑色のまま残っているマスが安全圏となります。
      見てわかる通り、メテオのような射程の大きい武器を持っているキャラがいる場合、索敵範囲が非常に広く、安全圏が非常に狭くなります。物理攻撃系の武器は射程が高々2しかないため索敵範囲が狭く、優位性を確保しづらくなります
      なお、特に戦闘終了までどの敵の索敵範囲外でもあり続けるような場所は、絶対安全圏と呼ばれます。通常は自発的に行動しない敵しか存在しない場合に考える概念です。たとえば隠れ里では、初期位置から動かない限りにおいてブロントのいる位置はスライムを全滅させた後であれば絶対安全圏です。

  • 行動タイプ
    テンミリオンの敵には3つの行動タイプが存在し、キャラクターごとに特定のタイプが割り当てられています。なお、ゲーム中にこれらを確認する方法はありません。
    • 積極型
      自ら進軍してくるタイプの敵で、大抵の敵はこのタイプに当てはまります。

    • 消極型
      相手が自分の索敵範囲内に入ってこない限りは進軍してこないタイプの敵です。雪原・鳥の巣・魔王の城に多いタイプの敵で、そのほかのステージでも主にアイテム持ちの敵に多く設定されています。相手の索敵範囲にさえ入らなければ一方的に攻撃できます。

    • 不動型
      その場から一歩も動かないタイプの敵です。相手の攻撃範囲にさえ入らなければ一方的に攻撃できますし、無視することも簡単にできます。
      山あいの村と2周目以降の魔王城以外の敵軍リーダーはすべてこのタイプで、ほかに通常敵でこの設定がされているものが少数存在します(1周目の魔王の城の左半分にいるコボルト2体とガーゴイルなど)。一歩も動かないため、このタイプの敵の行動範囲は移動力にかかわらずその場1マスのみで、攻撃範囲=索敵範囲となります。

テンミリオンRTAにおける手順構築の考え方

ようやく本題に移れます。このゲームをRTAする、すなわち可能な限り早くクリアする場合、ある一つの中心教義(セントラルドグマ)が存在します。

クリアするまでにかかる行動回数を、可能な限り少なくする

ここで、クリアターン数ではなく行動回数となっていることに注意が必要です。公式ランキングの一カテゴリに、クリアターン数ランキングがあります*7が、最少クリアターン数と実時間最速は必ずしも一致しません。なぜならば、ターン数を減らしても合計行動回数が増えてしまうと、その分だけ時間がかかってしまうからです。したがって、テンミリオンRTAにおいては、クリアターン数の削減よりも行動回数の削減が重要な意味を持ちます。ここで、行動回数はそれぞれの場合において以下のように定義されます。

  • 攻撃を伴わない単純な移動=自軍では1キャラにつき1回の行動として計算。敵軍では1ターン分で1回として計算*8
  • 攻撃を伴う移動(その場含む)=1キャラにつき、攻撃回数+0.5回分の行動として計算
  • キャラの死亡演出=1キャラにつき1回の行動として計算
  • ターンの途中終了=1回の行動として計算
  • 装備変更=1個変更するたびに1回の行動として計算
  • 戦闘離脱=1回の行動として計算

さて、クリアターン数を削減しつつ行動回数を削減する場合、以下の点に注意する必要があります。

  • できるだけ手数を掛けずにクリアするために、できるだけ威力の高い攻撃を繰り出す。
  • できるだけ無駄な演出を挟まないよう、無駄死にするキャラを少なくする。
  • 武器選択の手間を省くため、自動攻撃を最大限活用する。
  • 攻撃回数を減らすため、速さのステータス差の大きい組み合わせでの攻撃のやり取りを極力抑える。
  • 敵軍の攻撃回数を減らすため、極力安全圏にとどまる。
  • 第3軍がいる場合、うまく手伝ってもらって総行動回数を減らす。
  • 肉壁目的のキャラクターの反撃手段を没収し、行動回数を減らす。

これらの目的を達成するために、テンミリオンのRTAチャート構築にあたっては、内部仕様を深く理解することが求められます。以下、敵軍の行動決定方法について詳述します。難しい場合は結論だけを読んでいただいたので結構です。

ステップ1: 攻撃を評価する

まず、各キャラクターの可能な攻撃先を検証し、優劣をつけます。この評価は順番に行われ、もっとも評価が高かった行動から優先して行われます。

移動先と攻撃先を検討し、最良手の候補を決定する

まず1つのキャラについて、最良の移動先と攻撃先を検討します。移動先は、そのキャラの行動範囲を左上から右に向かって1マスずつチェックしていきます。1行チェックしたら下の行に移動して同様にチェックします。各移動先で攻撃行動をチェックしてから次の移動先をチェックします。

ある移動先において攻撃(または回復)可能な対象がある場合は、可能なすべての攻撃行動についてランク付けを行います。このとき、チェックする順番は移動後の場所から見て12時の方向から時計回りに、射程の小さい順となります。攻撃行動には、その内容によって次のように評価値が与えられます(小さいほど良い手)。なお、行動タイプが消極型または不動型の敵の場合、索敵範囲内に攻撃可能な対象がなければ探索の対象から除外されます。

  1. 一撃で対象を倒すことができる
  2. 自分はダメージを受けてしまうが、対象を倒しきることができる
  3. 自分は一切ダメージを受けることなく相手を攻撃することができる
  4. 自分はダメージを受けてしまうが、対象にもダメージを与えることができる
  5. 対象を1ポイント以上回復することができる
  6. 自分は死んでしまうが、対象にいくらかのダメージを与えることができる
  7. 上記以外、すなわち相手に攻撃できない(評価対象外)

ここで、評価値3,4,6の行動は、既に見つかっているものより与ダメージが大きいものほど格上となり、評価値2の行動は既に見つかっているものより被ダメージが少ないものほど格上となります。回復行動は最初に見つかったものだけが採用されます。この結果、もっともよいと判断される手が1つだけ決定されます(計算上は同格があり得ますが、この場合は先に見つかったものが格上です)。これを最良候補手として記録しておきます。

実際の攻撃内容を決定する

同様にして全キャラについて候補手を求めていきます。別のキャラクターを検討していくうちに、既に見つかっている候補手よりも良いものが見つかれば、最良候補手をその都度更新していきます。ただし、評価値1となる手が見つかった場合、即座に探索を打ち切ってその行動を実行します。同格の場合は先着優先のルールに従い、最初に見つかったものが採用されます。このようにして1つ目の行動が決まったら、その行動を実行します。

そのほかのキャラの攻撃内容を決定する

ここまでの手続きを再度行い、次々に行動を決定して実行します。行動のために戦況は変化していくため、以前より評価が良くなる手もあれば、悪くなる手も存在しえます。唯一異なるのは、既に行動したキャラクターは探索において除外することだけです。

ステップ2: 移動先を評価する

ステップ1において、行動しないまま残っている積極型の敵があれば、移動を評価することになります。これは以下のように行われます。

手持ちのアイテムをチェックする

行動未完了のあるキャラについて、手持ちのアイテムをチェックして、武器を持っていれば「攻撃可能」、回復アイテムを持っていれば「回復可能」とマークしておきます。

敵との位置関係を測定する

攻撃可能とマークされている場合、現在地から一番近い*9敵軍キャラを調べます。回復可能とマークされている場合、現在地から一番近い1ポイント以上回復可能な味方軍キャラを調べます。両方マークされている場合は、どちらか近い方が優先されます。また、どちらの属性もない場合は評価対象外となります。

実際に移動する

同様にして行動未完了キャラのすべてについて計算し、もっとも近かったものを実際に採用します。この操作を繰り返して全員の行動を確定します。

結論

敵軍の行動内容の要点は以下のようになります。なお、上述した行動決定ロジックの特性上、回復持ちの敵は、自分が1ダメージでも負っていれば、ほかに深手を負っている仲間がいたとしても自己回復を優先します。

  • 索敵範囲内に一撃で倒せるものがいれば最優先
  • 基本的に与ダメ最大化で動く。倒しきれるものがいれば、自分が死にさえしなければ倒しに来る。
  • 回復は優先順位が低く、捨て身タックルよりはマシ程度の扱い。
  • 積極型の場合、自身の索敵範囲外からの進軍は最も近いものを狙う。
  • 消極型および不動型の場合、自身の索敵範囲外からの進軍はしない。

経験値

敵に攻撃したり、仲間を回復したりすると、それに応じた経験値を獲得することができます。これは次の計算式で算出されます。 

  • 攻撃では、(相手のレベル - 自分のレベル + 1) * 5
  • とどめでは、(相手のレベル - 自分のレベル + 3) * 20 をさらに上乗せ
  • 回復では、(相手のレベル - 自分のレベル + 1)2  * 回復量 *10
  • ただし、計算結果が0以下になる場合は一律で1とする
  • 経験値が1000を超える場合には1000に切り捨て

この式からわかる通り、攻撃による獲得経験値はダメージ量に関係なく相手とのレベル差のみによって決まります。また、とどめを刺すと通常の4~5倍程度の経験値が獲得できます。しかし、回復行動では相手のレベル差の2乗と実回復量の両方に比例することから、攻撃よりもはるかに効率的に経験値を稼げることが分かります。そもそも、極端にレベル差のある敵に攻撃して経験値を獲得しようとしても、大抵は反撃によって死ぬだけなので、選択肢にさえならないこともあります。

戦力の決定

ここまでのテンミリオンの内部仕様が理解できて初めて手順構築を行うことができます。基本方針として、可能な限り少ない手数で、自軍の主力メンバーを最大限育成することが主眼となります。

まず、手順を構築するときに制限となるのがブロントの存在です。リーダーである彼が討たれると敗北なので、是が非でも守らなければならないのです。これは、ブロントは否が応でも育成しなければならないということを意味します。育成したからには戦力として活躍してもらわなければ釣り合いません。したがって、全種目においてブロントは主力部隊として前線で活動します。

ブロント一人だけでは心もとないですね。サポートメンバーを準備してあげましょう。ここで、このゲームにおいて魔法は圧倒的な優位性を確保できることを思い出しましょう。これによりサポートメンバーが魔法を扱えるキャラとなることが自動的に導かれます。通常、特に縛りがなければ性能の面から見てティンクが抜擢されます(サポートと言いながら最強キャラです)。

さて、主力は多ければ多い方がいいです。戦闘を有利に進められますからね。ところがひとつ大切なことを忘れています。行動回数は少なければ少ないほどいいのでした。この2つはお互いに矛盾します。主力を多く確保すると経験値が多くのメンバーに分散することになるため、育成効率が悪くなります。育成効率が悪くなることは余計に敵を倒さなければならなくなることを意味し、それはすなわち行動回数の増加です。つまり、この2つの折り合いをつけられる配分を探る必要があります。この配分は、ブロントとティンクのコンビを基本として、All Dungeons 系ではルファが加わります。

なお、特殊な例として、初期メンバーしか使えないAll Dungeons 5 Membersでは、魔法攻撃を担うのはマゼンダとなるので戦力はブロントとマゼンダとなり、魔法を封印するNo Magicではブロント・ブルース・リン・クロウが戦力となります。

基本戦術

さて、戦力が決まったところで戦術を練っていきましょう。といっても簡単です。レベルを上げて魔法で殴る、以上です。

では、それを可能にするための作戦を考えていきましょう。レベルを上げるためには経験値が必要ですから、なるべく一度に多くの経験値を得られればいいわけです。その方法は2つ考えられます。ひとつは、レベルの高い敵にとどめを刺すこと、もうひとつはレベルの高い味方を回復することです。回復役を置くことができないAny%のような短距離種目では、主力が攻撃と回復を兼任することで、素早く成長することができます。一方、All Dungeons系の回復役を置く種目では、主力の育成を重点的に行うように作戦を組みます。なぜなら回復は経験値効率がはるかに良いため、回復役は育成を行わなくても主力と同格まですぐに成長するからです。

次に、主力以外のメンバーの活用方法を考えます。主力メンバーは倒れると困るので、できればダメージを負いたくありません。そこで、戦力外メンバーが身代わりとなって主力を守るという方法が考えられます。このとき、捨て駒となる彼らをいかにして配置すれば主力を守ることができるかを考えるために、敵AIの行動アルゴリズムを理解していることが求められます。

最後に布陣と倒す敵を考えます。敵との相性や敵のステータス、周辺状況から倒すべき敵、放置する敵、切り離して無力化すべき敵を導きます。そして倒すべき敵に対して進軍するわけですが、このときの布陣は、相手の索敵範囲と行動を考慮して決定しなければなりません。ここでも敵AIの行動アルゴリズムを理解していることが求められます。そして、切り離すべき敵には戦力外メンバーを送っておびき寄せ、無力化します。

操作面から見たテンミリオンRTA

ここまで手順構築からテンミリオンRTAを考えてきました。いわば理論の側面です。今度は、操作面すなわち実践の側面から考えてみましょう。理論と実践が一体となって初めてRTAとして結実することができるのです。

テンミリオンは基本的にマウス操作だけでプレイするゲームですから、複雑な操作は一切ありません。戦闘中にスペースキーを押していれば、敵軍の行動やメッセージボックスを最速でスキップできるという知る人ぞ知る仕様はありますが、結局はいかに精確にマウスを操作できるかです。素早く適切な位置にマウスカーソルを動かし、間違いなくクリックするという基本的な技術が最も重要です。

一方で、最大14x14マスのフィールドのうち、画面上に表示されているのは7x7の範囲だけのため、広いマップでは適宜スクロールする必要があります。これはマップ端にマウスカーソルを持っていくことで行うのですが、スクロール速度が遅いためやりすぎるとロスとなります。そこで、テンミリオンRTAの手順を完璧にするためには、このスクロール操作を考慮しなければならないことが分かります。順不同な行動があるならば、できるだけスクロール回数が少なくなるように並び替えたり、そもそもスクロールしなくて済むような作戦を作ることが求められるわけです。

スクロールに関連して、自軍ターン開始時には、リーダーであるブロントが中央になるようにマップが表示されるという仕様があります。つまり、各ターンの手順はこの初期画面位置を考慮したうえで最適な行動順を考えていかなければならないのです。場合によっては何も行わない無駄行動を行うことでスクロールを抑制し、時間短縮につながることもあるのです。

おわりに

以上、テンミリオンRTAについて詳細に見てきました。小学生の時はなんとなく遊んでいたこのゲームですが、私が去年9月に緑SM64氏に誘われて15年ぶりに遊ぶと、非常に奥の深いゲームであると感じました。テンミリオンRTAの発展はそこから始まったわけですが、当初はここまで研究が進むとは誰も思っていませんでしたし、No Magicや5 MembersのようなカテゴリはRTAと胸を張れるほどの手順が存在するとは誰も思っていませんでした。また、Any%の手順の変遷は、テンミリオンRTAの進化の歴史そのものであり、2020年3月末に敵AIの行動が明らかになるまでは暗中模索が続いていました。その後もそれまで当たり前と信じてきた戦術を見直すことによるブレイクスルーもあり、極めつけには、魔法が使えないAll Dungeons No Magicの研究が、魔法が使えるAny%の大更新につながるといった予想外の収穫もあったわけです。Flashは2020年12月で終了してしまいますが、このゲームの研究はまだまだ始まったばかりです。Flashの代替となるRuffleの開発も着々と進んでおり、Flashの灯はこれからも燃え続ける中、テンミリオンRTAがどこまで発展するのか、楽しみでなりません。

*1:ten million; 1000万

*2:ファイーエブレムではない

*3:執筆者は実はプレイしたことがない

*4:本来はさいころを何回か振ったときの出目のようなでたらめな数字。ゲームにおいては計算式を用いてでたらめに見える数字を作り、それがランダム要素の決定に使用される。転じてランダム要素そのものや、実際に起こったランダムな現象そのものを乱数と表現することがある。

*5:いくらでも時間をかけてレベリングしてもよいのであれば、誰でも完走できます。しかしそれではRTAとしてはふさわしくありません。テンミリオンRTAにおいて完走者がいないとは、RTAだと胸を張って言えるほどの効率的な勝利手順を誰も考案できていないということです。

*6:テンミリオンにおける距離は、通常のユークリッド距離ではなくマンハッタン距離です。すなわち対象とする2点のx座標の差とý座標の差の和が距離になります。例えば自分の現在位置から見て距離2の位置は、自分の2マス先、右前、2マス右、右後、2マス後、左後、2マス左、左前の8マスです。

*7:チートによって荒らされてしまっているため、どこまでが真の記録なのか分からなくなっています。おそらく25~27ターンあたりまでが現実味のある記録です。

*8:敵軍ターンは、スペースキーを長押ししているだけで最速で進めることができるため。

*9:この時の距離は平方ユークリッド距離が使用されます。すなわち、x座標の差の2乗とy座標の差の2乗の和です。

*10:相手のレベル - 自分のレベル + 1 が5を超えるときは5に切り捨てる